2016年9月11日日曜日

20160910

街はずれにポツンと佇むその石屋さんは、数えきれないほどたくさんの石や変な置物が土ぼこりにまみれて色もよくわからないほど。

ほとんどは化石や鉱物コレクターの好きそうな石たちで、ジュエリーにできそうなものはあんまりないのかなぁ、と思いながら店内をグルリと一周していたらふと、古ぼけたドロワーを見つけた。

引き出しを開くと、そこには宝物みたいな小さな石たちがギュウギュウに並んでいる。




何十年もの時間をそこで過ごしてきた石たち。

欲しいのはたくさんあったけど、予算的にもう難しいから、と1時間かけて50個ほど厳選し、おじいさんのところへ持って行った。


おじいさんは私の選んだ石を眺めながら、きみはコレクターなのかい?と尋ねるから、いいえ、ジュエリーを作っているんです、と応えると、作品の写真が見たい、と言った。

そこで、原石で作ったジュエリーの写真を見せたら、おじいさんはおもむろに席を立ち、奥の部屋で何やらガチャガチャと音を立てて、しばらくすると、大きな両てのひらいっぱいにきれいな石たちを持ってきて、私の前にガチャリと置き、“These are gift for you."と言った。

びっくりしておじいさんの顔を見た。
とてもあたたかくて優しいまなざし。

嬉しくてありがたくて、涙が溢れてきた。


おじいさんがくれたのは私が選んだよりずっと高価な石ばかりだった。

どんなふうに感謝の気持ちを伝えればいいかわからなくて、おじいさんにハグをした。

すると、きみにはとても才能がある。これで、たくさんいい作品を作るんだよ、と、頭の上からあたたかくて優しい声が聞こえた。


神さまの声に似ている、と思った。







****


旅をするたびに、私はいつもこうやってたくさんの奇跡みたいな出会いと愛に巡り会う。

たとえ一期一会でも、とても深いところでわかりあえる何かを共有しては、その優しさや愛を魂の深い深いところに刻む。


アリゾナに来て、5日。

今回の旅でも、素敵な出会いにいっぱい恵まれている。

まったく知らない場所で、どれだけの石を見つけられるのか心配だったけど、来てみれば私史上いちばん美しくて素晴らしい石たちに出会えている。


この街へ石を売りに来る人たちのほとんどは商売人である以前に根っからの石好き。


好みの似た同士の間に流れる親近感には、国境も何もない。

ホテルに戻って伝票を確認してみたら知らないうちにずいぶんディスカウントしてくれていた、なんていうことも、一度や二度ではない。

短い時間の中でも、商売以上の何かでつながることのできる人たちが、世界中に存在する。
そのことを、すごく実感している。


こっちに来ていちばんかけられる言葉は「You have good taste!!」で、みんな、ジュエリーのこともお世辞抜きで褒めてくれる。

鑑識眼にはもちろん自信をもってはいるけど、プロ中のプロに太鼓判を押してもらえるのはやっぱり心強い。


素敵な石たちに出会ったり、そこにいる人たちと楽しいおしゃべりをするたびに、こうして私が素晴らしい時間を過ごすことができるのは、私の作品を愛して必要としてくれる人がいるおかげだなぁ、とあらためて周りの人たちへの感謝の気持ちが沸きあがってくる。

そして、ここでもらったたくさんの喜びや優しさを、作品を通じて今度は私から誰かにつないでいけたらいいな、とつくづく思う。


今回の旅で大変だったのは車での長距離移動が行きは濃霧と大雨、帰りは酷暑と疲労に見舞われたことくらいで、あとは自炊のできるちょっといいホテルに泊まりながら、とても快適に過ごしている。

一緒に来ている友だちはずっと石選びにつきあってくれていて、時にはアシスタントになったりカメラマンになったり、ホテルに戻ればご飯を作ったりと、大忙し。

彼女とは食の好みや考え方がまったく違うから戸惑うこともお互いたぶんいっぱいあるけど、ひとり旅よりずっと楽しい旅の日々を共有している。


残りの数日は、別の街でアート巡りや街歩きをしてのんびり過ごすつもり。


日本に帰ったら、この旅で見つけた宝物たちをぜんぶ並べて、うっとり眺める時間を作ろう。