2015年12月8日火曜日

20151208

また性懲りもなく体調を崩して、この数日は昼夜のべつなく眠りこけていたのが、少し良くなったら今度は目が冴えて、久しぶりに考えを言葉にまとめた長い文章を夜通し書いているうちに、気づいたら朝の7時を回っていた。

少し外に出てみようか、とコートを着、その上から最近お気に入りの、友だちがくれたネイティブ柄の大きなショールを羽織って、郵便物を手に外を出た。

思いのほか、空気が冷たい。


すぐそばのコンビニにポストインするか、それとも坂をくだったところにある郵便局まで歩いてみるか少し迷って、坂をくだってみることにした。

朝の人たちはなぜかみんな、私とは反対方向に歩いている。

学生もサラリーマンも、お米をトラックから運び出す人たちも警察官もウォーキングをする主婦までも、そろいもそろって私とすれ違う。

まるで、私だけがいつのまにか、世の中の大半の人たちにとってあたりまえみたいな営みからずいぶん離れてしまっているみたい。

少し心もとなくなって、冷たくなった耳に手をおしあてて曇った空を見上げたら、尾っぽの長い黄色い鳥のつがいが、ビルの壁のダクトから中に入っていくのが見えた。


自分の在り方について、私はなんにも思わない。
淋しいわけでも誇らしいわけでもなく、いろんな取捨選択や思考や感覚ののちに、なんとなくたどりついた、今の生き方。

心地は悪くない。
でもいつからか、自分と世界とを透明な膜がいつも確かに隔てているのを、感じている。


ピュウッと冷たい風が吹いたから、ネイティブ柄の大きなショールでしっかり身体を包みながら、坂道をゆっくりと、今度は上がる。

ネイティブ柄のショールは、もともと友だちのお気に入りだった。
誰かの持ち物を欲しいと思うことなんてめったにないのに、今日は寒いから、と彼女が貸してくれたそのショールを巻いた瞬間に、あぁ、これが私のだったらよかったのに、と強く思った。
そして彼女は、それを察して、私にお気に入りのショールをくれた。
キヨノちゃんの真似をしてみたよ、と笑いながら。


私がそれを欲しがったのは、そのネイティブ柄のせいだった。
そのネイティブ柄は、同じ柄の毛布にくるまって一緒に眠った人のことを、否応なしに思い出させた。
その人の存在は私にとって、私の生き方と同じくらい、なんにも思わないもの。
それはつまり私にとって、よくもわるくも結果的にいちばんしっくりくるもの、だ。

もともとわずかしかないその人との記憶はもう過去にしかなくても、その人が私を抱きしめたほんの数時間に覚えたあのしっくりくる感じの安心感を、私はきっと今もなお、現在進行形で大切にしたがっている。


ネイティブ柄の大きなショールを羽のように広げて自分の身体をくるんだとき、私はとても鮮明に、彼の腕の中で見つけた、いつかの自分がずっと求めていて、そしてやっと出会うことのできた膜のないあの安心感を、蘇らせることができた。

あのとき私は、せつないでも嬉しいでもなく、ただ、安心していた。
だからどうしても、あのショールが欲しかったんだ。

そして今、ネイティブ柄の大きなショールはしっかりと私の身体を包みこんで、世の中の人たちとさかさまみたいに歩いている私にそっと、寄り添っている。
その、心強さ。

これがあればじゅうぶんだ、と強がって、私はいさましく、家までの坂を上がっていく。


今朝は、ずいぶんと寒い。
朝の人たちの一日は、もうすっかり始まっている。

みんなの一日が、それぞれにとって、それなりに良いものでありますように。


小さく願って、私はたぶんもうじきまた、昼夜のべつなく深い眠りにつくんだろう。








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